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【新人薬剤師向け】手術部位感染(SSI)予防における抗菌薬の使い方の基本

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今回は、新人薬剤師や薬学生の方に向けて、手術部位感染(SSI)予防のための抗菌薬使用について、現場で役立つ知識をまとめました。

「どの薬を、いつ、どれくらい使えばいいの?」
「投与終了のタイミングは?」
そんな疑問を一緒に解決していきましょう!

【ご注意】
本記事は、新人薬剤師および薬学生向けに作成された内容です。
医療関係者を対象とした情報を含んでおり、一般の方(患者さんなど)を対象としたものではありません。
ご自身の治療や服薬に関するご不明点は、必ず主治医や薬剤師にご相談ください。

手術部位感染(SSI)とは?

SSI(Surgical Site Infection)は、手術後に手術創や周辺組織に起こる感染症です。発症すると以下のような問題が起こります。

  • 術後の回復が遅れる
  • 入院期間が延びる
  • 医療費が増加する

➡ そこで大切なのが「術前予防的抗菌薬投与」です。

1. どんな抗菌薬を使うの?

SSI予防では、皮膚常在菌(ブドウ球菌など)をカバーできる抗菌薬が基本です。手術部位によって腸内細菌や嫌気性菌も考慮します。

術式の種類主に想定される菌種推奨抗菌薬の例
清潔手術(整形外科など)ブドウ球菌(皮膚常在菌)セファゾリン
下部消化管手術腸内細菌、嫌気性菌セフメタゾール、メトロニダゾール
婦人科手術嫌気性菌セフメタゾール、セファゾリンなど

2. 抗菌薬の投与タイミングと量は?

タイミングが最重要!

手術直前~開始60分以内に投与するのが原則です。
静注後すぐに効果が出るため、手術開始の直前投与でOK

薬剤投与タイミング(目安)再投与の目安(長時間手術)
セファゾリン手術直前~開始60分前3時間ごと
メトロニダゾールセファゾリンと同時またはやや前8時間ごと

投与量は体重で調整

体重セファゾリンの投与量
80~120kg2g
>120kg3g

投与間隔は腎機能で調整

eGFRセファゾリンの投与間隔
≧503~4時間ごと
20~508時間ごと
<2016時間ごと

3. 投与期間は術中まで!だらだら続けない!

SSI予防の抗菌薬は、術後に継続投与する必要は基本的にありません

術後投与継続の考え方内容
原則術後24時間以内に終了
継続が認められる例心臓外科など一部のハイリスク手術

➡ 無駄な抗菌薬使用は耐性菌のリスクを増やすので注意!

4. 薬剤師のチェックポイント

薬剤師が現場で確認・支援できるポイントはこちら!

  • ✅ オーダー内容が妥当か(薬剤・用量・タイミング)
  • ✅ 実際の投与時間が適切か
  • ✅ 術後も抗菌薬が継続されていないか(止め忘れのチェック)
  • ✅ 看護師・麻酔科医との連携を意識する

5. よくある質問Q&A

Q1. ペニシリンアレルギーの患者さんはどうする?

A. セファゾリンが使えない場合は、バンコマイシンクリンダマイシンを選択。
ただし、バンコマイシンは投与タイミングが早め(手術開始の1〜2時間前)なので注意!

Q2. メトロニダゾールの投与タイミングは?

A. セファゾリンと同様、手術直前~開始60分前が目安。
手術直前の一括投与でも問題ないことが多いです。

まとめ

✨手術部位感染予防の抗菌薬使用の3原則✨

  1. 正しい薬剤を選ぶ(術式と菌種を意識)
  2. 正しいタイミングで投与する(手術直前~60分前)
  3. 正しい期間だけ使う(術後は原則不要)

薬剤師として、術前予防的抗菌薬の適正使用に貢献することはとても重要です。
医師・看護師との連携を大切にしながら、安心・安全な手術医療を支えていきましょう!

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病院薬剤師
2020年から病院薬剤師。
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