“これ、家でも飲んでますか?”持参薬確認の実践テクニック
こんにちは、linです。
今回は、新人薬剤師・薬学生の皆さんにとって避けて通れない業務――持参薬の確認について、実践的なテクニックをご紹介します。
服薬状況を正確に把握することは、患者さんの安全確保や治療の質の向上に直結します。とくに入院時の持参薬確認では、わずかな見落としが大きなトラブルにつながることも。
本記事では、以下の3つのポイントに分けて解説します。
1. 確認の優先順位を明確にしよう
限られた時間で持参薬を確認するには、優先順位の判断が欠かせません。次の3点を軸に考えると整理しやすくなります。
【優先度 高】
- 抗凝固薬、抗血小板薬(例:ワーファリン、リバーロキサバン)
- インスリンや経口糖尿病薬
- 免疫抑制剤(例:タクロリムス、シクロスポリン)
- 抗てんかん薬、抗精神病薬
→中止・継続・変更が直接命に関わる薬剤は最優先で確認。
【優先度 中】
- 降圧薬、利尿薬、ステロイド
→入院後の血圧や電解質管理に影響するため注意。
【優先度 低】
- 頓服薬、健康食品、サプリメント
→記録はするが、急を要さない場合が多い。
2. 服用歴の“引き出し方”の工夫
患者さんに「これ、普段から飲んでますか?」と聞いても、実は正確な情報が得られないこともあります。特に高齢の方では、記憶や認識のずれが起きやすいため、以下のような工夫が有効です。
✔ ポイントを押さえた質問例
- 「この薬、朝・昼・晩のどれで飲んでいましたか?」
- 「何の薬かわかりますか?例えば“血圧の薬”とか」
- 「この薬を飲まないと、どんな症状が出そうですか?」
✔ 確認資料を活用
- お薬手帳の記載内容・貼付シール
- 薬局の薬袋、薬情(薬剤情報提供文書)
- 家族や介護スタッフへの聞き取り
💡ワンポイント
「患者さんの記憶に頼りすぎない」ことが大切。第三者の視点と記録を組み合わせることで、より正確な情報が得られます。
3. リスク管理につなげる視点を持つ
持参薬の確認は「記録して終わり」ではありません。
確認した情報をリスク管理の視点で活用することが求められます。
✅ 具体的には…
- 持参薬と病棟で処方された薬に重複・相互作用がないか確認
- 休薬が必要な薬(例:ワーファリンと手術)についてタイミングと代替の有無をチェック
- 退院後の処方設計に向けて、持参薬の継続可否や切り替えを見据えておく
✅ 情報共有の徹底
- 医師や看護師へのフィードバック(特に休薬・要調整薬)
- 薬剤部内での引き継ぎ(電子カルテへの記載やTDM対象薬のチェック)
持参薬確認チェックリスト(印刷してそのまま使えます)
以下のチェックリストは、印刷して持参薬確認時のツールとして活用できます。
WordやPDF化して現場用に加工してもOKです。✅ 持参薬確認チェックリスト(印刷してそのまま使えます)
以下のチェックリストは、印刷して持参薬確認時のツールとして活用できます。
WordやPDF化して現場用に加工してもOKです。
□ お薬手帳、薬袋、薬情の有無を確認した
□ すべての持参薬を1剤ずつ「継続中かどうか」本人または家族に確認した
□ 剤形・用法・服用時間・服薬目的を確認した
□ 高リスク薬(抗凝固薬、糖尿病薬、抗てんかん薬など)は優先して確認した
□ 健康食品・サプリメント・市販薬の服用歴も聴取した
□ カルテに持参薬の一覧と服用状況を記録した
□ 持参薬の中止・継続判断が必要な薬は医師に報告した
□ 持参薬と処方薬の重複・相互作用の有無を確認した
□ TDM対象薬はモニタリングの必要性を確認・記録した
□ 退院後も含めた服薬設計を意識し、記録を残した
おわりに:観察力と会話力がカギ!
持参薬確認は、単なる薬のチェックではなく、その人の生活と治療歴を読み解く行為でもあります。
患者さんの声を丁寧に聞き取りながら、「何を」「なぜ」飲んでいるのかを立体的に理解する姿勢が、信頼関係を築き、ミスを防ぐ鍵になります。
“これ、家でも飲んでますか?”
その一言の重みを、ぜひ日々の業務で感じてみてください。