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患者面談の前に必要な情報は?現役の病院薬剤師が解説

linze_neko

患者面談の前に把握しておくべき情報を、現役の病院薬剤師がまとめました。
全ての患者で把握しておくべき基本情報から、それぞれの患者に合わせた情報収集などを詳しく解説します。

【ご注意】
本記事は、新人薬剤師および薬学生向けに作成された内容です。
医療関係者を対象とした情報を含んでおり、一般の方(患者さんなど)を対象としたものではありません。
ご自身の治療や服薬に関するご不明点は、必ず主治医や薬剤師にご相談ください。

情報収集の心得 ”薬を見る”

「どこまで情報を取ればいいんだろう?」
時間をかけて情報収集したのに、先輩からあれは?これは?と聞かれたら答えられない。。。
新人にとって、簡単なようで難しく感じるところです。

コツは”薬を中心にみること”です。

情報収集は主に医師のカルテから取ることになりますが、医師の中心は”患者”になるため、情報の幅がとても広いです。同じ視点で見ていては知識も時間も足りません。
私たちは”薬剤師”として介入していくので、自分の領域に絞っていきましょう。

全患者共通の情報

基本情報

入院目的、現病歴、既往歴・併存症

いわゆる患者背景。
新人のうちは、色々気になって必要のない情報まで集めてしまうことが多いです。サラッと取る、くらいのスタンスでいることをオススメします。

アレルギー歴

薬はもちろんですが、食べ物のアレルギーでも薬に関係するものがあります。

  • 薬剤
  • 大豆、ナッツ類
  • 乳製品
  • メロン、グレープフルーツ、キウイフルーツなど(ラテックス)
  • 金属(手術器具)

最低でもここで挙げたものについては、該当するものがないか確認しておきましょう。

入院前内服薬

実物やおくすり手帳などから、事前に内容を確認しておきましょう。

実物がある場合は、残薬数の違いや調剤形式(一包化など)を把握しておくと、スムーズに面談を行えます。

入院後の薬剤指示・薬剤管理

入院前内服薬の継続or中止

確認先は、カルテもしくは受け持ち看護師です。

カルテに指示が入っていると非常にわかりやすいのですが、施設や診療科、医師個人によって方針が違います。
カルテに入っていない場合、多くは受け持ち看護師の申し送りに含まれているので、一度確認しましょう。

指示を確認したら、その指示が問題ないかを確認します。
術前中止薬が継続指示になっていないか、離脱リスクのある薬剤がいきなり中止指示になっていないか、新規開始になる薬剤との併用は可能か、などを確認しましょう。

持参薬の有無

施設によって異なりますが、患者が持参した薬剤を入院中も使用する場合は、数を確認するとともに、想定される入院期間で不足がないかも確認しておきましょう。
院内に採用のない薬剤を内服している場合、特別に購入しなければならない可能性があります。

新規開始薬剤

入院後、追加になる薬剤を確認します。
通常の処方監査に加え、患者の今の病態を踏まえて用法用量の確認をしましょう。

入院後の食形態、薬の剤形

状態が悪化して緊急入院してきた患者では、意識状態が悪くなっていたり、嚥下機能(食べ物を飲み込む能力)が低下していることがあります。
入院後の食事、剤形がその時の状態にあっているか確認しましょう。

患者ごとに追加で取る情報

どの程度意思疎通が取れるのか

今から話にいく人は、手術目的で来た人で、もともと飲んでる薬はこれとこれで、入院後の指示はこうで、、、聞くことはこれとこれで、言うことはこれで、、、よし!

新人「こんにちは!薬剤師の、、、」

  「んあ?」

新人「薬の説明を、、、」

  「ああー」

新人「・・・」

やったことある薬剤師、多いと思います。

新人ほど忘れがちな視点です。
しっかりと疾患や薬の情報を取ることは大事ですが、そこには患者がいることを忘れずに。

患者の疎通状況は、看護師のカルテを見るのが一番よく分かります。1日に何回かSOAP形式で書かれているカルテがあるので、Sを参考に疎通の確認をしましょう。

認知症・意識障害のある患者

認知症・意識障害は重症度によってさまざまな患者がいます。カルテに認知症の記載があるのに普通に会話できる患者もいれば、はじめに紹介したように言葉にならない発声しかできない患者もいます。

患者に聞く内容、伝える内容の優先度を決めてから面談に行きましょう。
また、面談を始めたら、意識状態や理解度の様子を見つつ、優先度の高い情報から順に話していきましょう。理解が追い付いていないな、と感じたら面談を切り上げて、残りの情報を患者家族や医師、受け持ち看護師と共有するのも一つの手です。

緊急入院や術直後で一時的に意識状態の悪い患者は、後日意識が回復してからもう一度面談に行くのがよいでしょう。

危険な患者

キャラクター的に怒りっぽい患者や、精神疾患で暴力行為をする可能性のある患者の場合は、面談前に受け持ちの看護師から今の状況を聞いておきましょう。程度が激しい場合は、抑制状況も聞いておくとさらによいです。

患者から医療者への暴言・暴力行為は、酷ければ強制退院の対象となります。医療者はケガをする恐れがありますし、患者も治療を完遂できず不利益となってしまいます。

タイミングを見計らって面談に行くようにしましょう。

まとめ

面談前の情報収集では、すべての情報を取ろうとせず「薬」を中心に必要な情報を効率よく集めることが大切です。全患者に共通する基本情報に加え、意思疎通の可否や認知機能など個別の状況も事前に確認しましょう。事前準備をしっかり行うことで、落ち着いて質の高い面談を行えるようになります。

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病院薬剤師
2020年から病院薬剤師。
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