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抗うつ薬で太るのはなぜ?原因と対策を薬剤師が解説

linze_neko

うつ病や不安障害の治療で使われる「抗うつ薬」。
心を安定させてくれる大切な薬ですが、「飲み始めてから太った気がする…」という声もよく聞かれます。

実際、抗うつ薬の中には体重増加の副作用があるものも存在します。
この記事では、抗うつ薬で太る理由とそのメカニズム、薬の種類ごとの特徴、太らないための対策を薬剤師の視点でわかりやすく解説します。

【ご注意】
本記事は、一般の方向けに情報提供を目的としたものです。
ご自身の治療や服薬に関するご不明点は、必ず主治医や薬剤師にご相談ください。

抗うつ薬で太る理由は?

抗うつ薬で体重が増える原因は、ひとつではありません。主に次のようなメカニズムが関与しています。

1. 食欲が増す

一部の抗うつ薬は、脳内のヒスタミンやセロトニンなどの神経伝達物質に作用し、食欲を亢進させることがあります。
「気分が少し楽になったから、自然と食べられるようになった」と感じる方も多いですが、薬の影響で空腹感が強くなることも。

2. 代謝が落ちる

抗うつ薬の中には、代謝をやや低下させる作用を持つものがあります。
同じ食事量でも、消費カロリーが減ると体重が増えやすくなります。

3. 運動量が減る

うつ病そのものの症状(気力の低下、疲れやすさ)や薬の副作用(眠気、だるさ)によって身体活動量が減少し、消費エネルギーが減ることも原因のひとつです。

太りやすい抗うつ薬の種類

すべての抗うつ薬が太りやすいわけではありません。以下に、主な薬剤と体重への影響の傾向をまとめました。

薬の種類商品名の例太りやすさの傾向
三環系抗うつ薬トリプタノール(アミトリプチリン)、トフラニール/イミドールなど太りやすい
四環系抗うつ薬テトラミド比較的太りやすい
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)ジェイゾロフト、レクサプロなど比較的太りやすい
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)サインバルタ(デュロキセチン)、イフェクサーなど太りにくい
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)リフレックス/レメロン(ミルタザピン)非常に太りやすい
その他デジレル/レスリン(トラゾドン)、ドグマチール(スルピリド)など比較的太りにくい
※抗うつ薬の体重増加リスクは、PMDAの添付文書、治療ガイドライン、UpToDate等の文献情報を参考にまとめています。

特にリフレックスやトリプタノールは、食欲増進・代謝低下の両方の影響が強く、体重増加のリスクが高いです。

太らないためにできること

抗うつ薬を服用しながら、体重管理をするにはいくつかの工夫が必要です。

1. 食事の量と質を見直す

「食欲が出てきた」=「健康になった」ではありますが、過食には注意が必要です。
野菜・たんぱく質を中心にしつつ、間食や高カロリー食は控えめにしましょう。

2. 定期的に体重を記録する

体重は週1回でも良いので、記録して変化を意識しましょう。
「少し増えたな」と感じた段階で早めに生活を見直すことが重要です。

3. 無理のない範囲で運動する

散歩やストレッチなど、軽い運動を習慣化するだけでも代謝アップ・体重維持につながります。
うつ病の治療中は無理をせず、できる範囲から始めましょう。

4. 医師・薬剤師に相談する

体重増加がつらい場合は、薬の種類や用量の見直しも検討されます。
自己判断で中断せず、医療者に相談することが大切です。

まとめ:抗うつ薬と体重増加の関係を正しく理解しよう

抗うつ薬は、心の回復をサポートする重要な薬です。
一方で、薬の種類によっては体重増加の副作用が出ることもあります。

しかし、それは「効いていない」わけでも「体質のせい」でもなく、多くの人に起こり得る自然な反応です。
焦らず、できることから生活を整えつつ、主治医や薬剤師と連携しながら治療を続けていくことが大切です。


このブログは一般の方向けに情報提供を目的としたものです。治療中の方は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

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病院薬剤師
2020年から病院薬剤師。
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