添付文書だけじゃ足りない!インタビューフォームを使いこなそう
こんにちは、病院薬剤師linです。
「この薬って、透析でどれくらい除去されるんだろう?」
「配合変化、大丈夫かな?」
「添付文書に載ってない…どうしよう」
新人薬剤師や実習中の学生さんなら、一度はこんな場面に遭遇するはず。
実はそれ、インタビューフォーム(IF)に答えが載っているかもしれません。
今回は、添付文書だけでは分からない情報を、どうやってIFから引き出すかを紹介します。
現場で役立つ“裏資料”の使い方、ぜひ覚えておきましょう!
【ご注意】
本記事は、新人薬剤師および薬学生向けに作成された内容です。
医療関係者を対象とした情報を含んでおり、一般の方(患者さんなど)を対象としたものではありません。
ご自身の治療や服薬に関するご不明点は、必ず主治医や薬剤師にご相談ください。
インタビューフォームとは?
インタビューフォームは、製薬企業が医療従事者向けに提供している文書で、
添付文書ではカバーしきれない薬剤情報を、より詳細に記載している資料です。
厚生労働省の定めたガイドラインに基づいて作成されており、薬の科学的・臨床的な背景や、実際の使い方に関する情報が豊富に含まれています。
添付文書には載っていない!IFでしか得られない情報の具体例
添付文書ではカバーしきれない情報の一部を、インタビューフォームでは確認できます。
以下のような項目がその代表です。
情報カテゴリ | 内容 |
---|---|
開発の経緯・特性 | どのような疾患を想定して開発されたか/治療学的意義 |
製剤特性・安定性 | 有効成分の安定性/調製後の保存条件/溶解後の使用期限 |
配合変化 | 他剤との混合における外観変化・力価低下など |
薬物動態の詳細 | Tmax、半減期、分布容積、溶出性など |
透析除去性 | HD・PDによる除去率、補充投与の必要性 |
組織移行性 | 胎児・乳汁・髄液への移行データ |
治験成績の詳細 | 投与例数、副作用発現率、用量設定の根拠など |
禁忌・警告の根拠 | 添付文書より詳しい症例・理由の記載あり |
これらの情報は、添付文書には一部しか記載されていなかったり、簡略化されているため、現場判断に必要な“根拠”を補う資料として非常に有用です。
実際に使ってみよう:ケース別活用例
● ケース①:透析患者に薬を使いたい
添付文書には「腎障害患者には慎重投与」程度しか書かれていないことがあります。
→ IFでは、「透析により約60%が除去される。透析後に補充投与が望ましい」など、具体的な除去率や投与判断の目安が記載されています。
● ケース②:抗菌薬の配合投与を確認したい
添付文書に「他剤との配合は注意」などと曖昧な記載しかない場合があります。
→ IFでは、「セフトリアキソンとカルシウム製剤の配合により沈殿生成。混合不可」など、実験結果に基づく配合変化情報が得られます。
● ケース③:溶解後の安定性を確認したい
添付文書には「速やかに使用のこと」としか書かれていない場合もあります。
→ IFには、「室温保存で24時間安定」や「冷所保存で48時間まで使用可能」など、保存条件と安定性データが具体的に記載されています。
インタビューフォームの入手方法
以下の2つの方法で入手できます。
● PMDA 医療用医薬品情報検索
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
薬品名を入力 → 添付文書ページの下部に「インタビューフォーム(PDF)」のリンクがあります。
● 製薬企業の公式サイト
「○○製薬 インタビューフォーム」で検索すると、PDFで公開されていることがあります。PMDA未掲載のIFが見つかる場合もあります。
インタビューフォームを“使える薬剤師”になろう
添付文書は、薬の「基本情報」です。
インタビューフォームは、薬の「実践情報」「判断根拠」を補ってくれる、まさに臨床の裏マニュアル。
特に病院薬剤師にとっては、
- TDM設計
- 腎機能・透析患者への対応
- 疑義照会や他職種への情報提供
- 投与設計や配合の可否判断
といった場面で、IFを使いこなせるかどうかが、業務の質を左右すると言っても過言ではありません。
新人薬剤師へのワンポイントアドバイス
「調べて終わり」ではなく、「調べた情報を症例に使うこと」を意識しましょう。
最初は読むだけでも難しく感じますが、毎日の投薬業務や服薬指導の中で1つずつ活用していけば、確実にスキルとして身につきます。